『Fallen03』
パーシヴァルは頭が真っ白になり、
うっかり手に持っていた楽器を取り落としてしまった。

(しまった)

ガサガサとリュートが茂みに転がる。
その音に、こちらに気づいた少女が歩み寄ってくる。

その素肌には絹一枚纏われていない。

「お前・・・そこでなにをしている?」
少女が目の前まで来たところで、やっと我に返ると、改めて見る少女の肢体にハッとした。
慌てて顔を逸らす。
「す…すみません…別に覗いていたわけじゃ…」
自分でも分かるぐらい顔の温度が上がっている。
きっと傍目にも分かるぐらい真っ赤になっていることだろう。
その様子に、少女は不思議なものでも見るように小首をかしげた。

――この者は何故赤くなっているのだろう?体調でも悪いのではないか?
少女が2度3度小首をかしげていたところで、どう答えようかと考えあぐねていたパーシヴァルがやっと口を開いた。
「その…服を…きてくださぃ……」
いいながらクルリと背中を向けて小さくなる。
「おかしな奴だ。服など着て水に入れば、服が濡れてしまうであろう?」
「そ・・・それはそうだけど・・・」
まるで、お前のいう事がおかしいとばかりに少女は答える。
「それに、素肌のままのほうが気持ちよいぞ?何故人はこのようなものに身を包みたがるのだろな、まったく愚かしい事だ。」
「さぁ・・・でも・・・あなたも・・・その・・・人でしょう?」
そう言われて少女の目が驚いたように開き、己の体をしげしげと見下ろすと、なるほどといった様に微笑んだ。
「そうだな。しかしお前、何故こちらを見ようとしないのか?誰かと話をする時は素の者の目を見て話せと教わらなかったのか?」
「貴方がそのような格好をしていては、そちらを向く事ができません…」
「まったくお前は面白いな。よかろう、服を着ねば話ができぬというならば着てやろうではないか」
少女は名残惜しそうに湖面を見ていたが、木にかけてあった服を剥ぎ取った。

<<Back         Next>>




もどる
copyright 2005 DejaVuArtWorks All Right Reserved