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ある月の綺麗な夜 人気のない森の湖畔に、楽器を片手に持った一人の青年がいた。 名をパーシヴァルといい、地味な見習い作曲家だった。 この湖畔は夜が更けると辺りを静寂が支配し、湖面に映った月はとても綺麗で作曲にはもってこいの場所なのだ。 パーシヴァルはいつものように羊皮紙を取り出し、譜面作りにいそしもうと思った。 だが、この日はいつもと違った。 先客がいるようなのだ。 「水音・・・?こんな夜更けに一体誰が?この場所は僕しか知らないはずなのに」 生い茂る茂みを掻き分ければ目の前はもう湖。 パーシヴァルの鼓動は、誰かに聞こえてしまうのではないかというほど高鳴り、 まるで金縛りにあったようにその場から動けなくなってしまった。 パーシヴァルはそこにいた先客にすっかり釘付けになってしまったのだ。 透き通るような白い肌にゆるくウェーブのかかった長いブロンド。 熟れたサクランボのような唇・・・そのどれをとってもこの世のものとは思えないような美しさだった。
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